義務化で対応必須?!ウェブアクセシビリティを考えてみる

コラム
レベル: ★★☆☆☆

おはようございます、K’z Style代表・宮崎です。

最近よく耳にするようになった「ウェブアクセシビリティ」という言葉ですが、一体どんなものでしょうか?また、なぜ最近話題になっているのでしょうか?
今回はウェブアクセシビリティについての概略をご紹介します。

ウェブアクセシビリティって?

「ウェブアクセシビリティ」とは、ウェブコンテンツのアクセスのしやすさのことを意味しています。
注意したいのが、ウェブアクセシビリティは障がい者や高齢者に限定したものではなく、そうした方々への配慮・対応も含めてあらゆる人々にとってのアクセスのしやすさを指している、ということです。
「ウェブアクセシビリティが確保できている」状態というのは、具体的には次のような状態になることが望まれています。

  • 目が見えなくても情報が伝わる・操作できること
  • キーボードだけで操作できること
  • 一部の色が区別できなくても情報が欠けないこと
  • 音声コンテンツや動画コンテンツでは、音声が聞こえなくても何を話しているかわかること

詳しくはウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)のサイトで公開されているコンテンツが参考になります。

なぜ最近話題なの?

2021年5月に障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)が改正・可決され、公布日の2021年6月4日から起算して3年以内に施行される予定となりました。

もともとこの法律は国や自治体に対して障がい者への「合理的配慮」の義務を求めたもので、民間企業は「努力義務」だったものが、法改正により今後は民間企業にも同様に合理的配慮の法的義務を求めるようになりました。

加えて、海外ではアメリカの歌手ビヨンセのウェブサイト運営会社が全盲のファンに訴えられるといったことをはじめ、ウェブアクセシビリティに対応できていないために起こった訴訟も大幅に増加していることもあり、民間企業も自社のウェブサイトについて何らかの対応をしておかないと損害を被る恐れがあると考え動き出しているようです。
特にSDGsの取り組みを掲げている企業は、その一環としてウェブアクセシビリティへも取り組みを進めるケースも増えています。

罰則はあるの?

障害者差別解消法では、罰則として、「第六章 罰則 第二十六条 第十二条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する。」とあります。

第十二条とは、「第十二条 主務大臣は、第八条の規定の施行に関し、特に必要があると認めるときは、対応指針に定める事項について、当該事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。」とあり、第八条とは「第八条 事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。」のことです。

つまり、事業者はこの法律の遵守にあたり主務大臣から求められた報告をしなかったり、虚偽の報告をした場合、20万円以下の過料に処されることになります。
しかし、2023年5月の時点では、XXの規格に則った対応をしなければならないといったことまでは明記されていないようで、「合理的配慮を行わなければならない」となっています。

「合理的配慮」って?

内閣府からのリーフレットに合理的配慮の提供についての文書がありますが、ウェブサイトについての具体的な対応措置は特に言及されていないようです。内閣府のサイトで公開している障害者差別解消法の基本文書では「求めに応じて電話や電子メールでの対応を行う」ことも合理的配慮の提供に入るようです。

まずは「障害者から「社会的なバリアを取り除いてほしい」旨の意思の表明があった場合に、その実施に伴う負担が過重でないときに、社会的なバリアを取り除くために必要かつ合理的な配慮を講ずる」ということを考え実施することを検討しましょう。

なにをすれば良いか?

では、民間企業(のウェブ担当者さん)はなにをすれば良いのでしょうか?

具体的には次のことを進めていきましょう。

1. 方針を決める

1-1. 対象範囲を決める

ウェブアクセシビリティ対策を行う範囲を明確にします。これにより次のステップの対象(ウェブページやシステム)のボリュームが明確になります。

現在自社にはどれくらいの量のウェブページがあり、ウェブアクセシビリティの対象とするのはどのドメイン(サブドメイン)のどのディレクトリ/ページとするのか、まで絞り込むことを目標にします。

また、HTML以外のウェブページ(PDFなど)や動画を範囲に入れるのか除外するのかの判断をしておくことも重要です。

対象範囲の洗い出しは自社、または自社ウェブサイトを保守している会社で行うことをおすすめします。この段階でまったく外部の会社に任せるのは得策ではありません。自社のウェブサイトのことを一番よく知っている所で行うことをおすすめします。

1-2. 適合レベルを決める

ウェブアクセシビリティをどのレベルまで実施するかの指標となるものが「JISX8341-3:2016」に適合レベルとして定められています。現時点では、JISX8341-3:2016のそれぞれの規格に沿った対応をするのが良いでしょう。

適合レベルは、最低限のレベルとして「A」からレベルが上がるにしたがって「AA」「AAA」となり難易度も上がってきます。
また、それぞれの適合レベルへの対応度を示す度合いの指針をWAICが「準拠」「一部準拠」「配慮」の3つを示しています。

これらをふまえて自社の目指す適合レベルを決定しましょう。総務省をはじめ官公庁などでは「適合レベルAA準拠」を満たすことを宣言していることも目安の一つになるでしょう。

1-3. ウェブアクセシビリティ方針をまとめる

ここまでの内容で、企業のウェブアクセシビリティへの対応度を表記するために「ウェブアクセシビリティ方針」としてまとめておくのが良いでしょう。
WAICよりウェブアクセシビリティ方針策定ガイドラインが公開されていますので参考にすることをおすすめします。

2. 状況をチェック

方針が決まったら、それに沿って対象ページをチェックしていきます。

チェックの際には、WAICから公開されている「JISX8341-3:2016 試験実施ガイドライン」が参考になるでしょう。

各種チェックツールもありますが、ツールですべてのチェック項目を網羅しているわけではないので、最終的にはひとつひとつ目視で確認していきます。

前フェーズで対象範囲を洗い出していますので、対象範囲のボリュームと自社のマンパワーを考慮して状況チェックを外部の会社に依頼することも検討してみるのも良いかと思います。

状況チェックの結果、その修正量からウェブページを修正するよりウェブサイトを全面リニューアルするほうが時間的・費用的にも良いケースも出てくることもあります。
改修かリニューアルか、自社で対処するか外部の会社に任せるか、なども含めてこの後のフェーズの進め方を決定する必要があります。

3. 対処

対象ページのチェックが完了したら実際にウェブページを修正していきます。

このフェーズも自社(または自社ウェブサイトを保守している会社)で行うか、外部の会社に依頼するかを検討してみます。

ボクがいくつかのウェブサイトのウェブアクセシビリティ対応を行なってみて大変だったこととして

  • システムやCMSから生成されているページへの対応
  • コーポレートカラー(ブランドカラー)と文字とのコントラスト比の確保
  • 一時停止機能を持たないスライダーライブラリ使用時の対応

などがありました。ウェブサイトの特性によって他にもJISX8341-3:2016に準拠させるのに苦労するものが出てくる可能性があります。

4. 対策方法の策定&教育

既存ページの対処が完了すれば終わりではありません。ウェブサイトは日々更新され新しいページも追加されていきます。更新/新規作成されたページも「ウェブアクセシビリティ方針」を満たすようにしておかなければなりません

そのために、ウェブアクセシビリティを考慮した自社のウェブページを制作するためにウェブページ制作ガイドラインといったものを用意し、それに沿ってウェブページを作るようにしておくのが良いでしょう。

ウェブページ制作ガイドラインはウェブ制作会社だけが遵守するのではなく、自社社員がCMS等を使ってウェブページを作るのであれば社員も遵守しなければいけません。
そういったことを考慮すると、ウェブページ制作ガイドラインに基づいた教育も必要となってくるでしょう。

まずは状況確認してみる

以上、ウェブアクセシビリティに対応したウェブサイトにするために予備知識と実施内容をざっとご説明しましたが、まずは自社のウェブサイトのウェブアクセシビリティを検証してみましょう。
以下に示すツールを使って主要なページをチェックしてみて自社の状況を把握することをおすすめします。

・スクリーンリーダーで読み上げしてみる

チェックツールでチェックしてみる

  • axe DevTools
    Chromeの拡張機能として動作するチェックツール

参考資料

 

最後までおつきあいいただき、ありがとうございます。

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